建設工事M&Aでは、会社の数字と、譲渡後も工事を続けられる体制を一緒に確認します。受注残、許可、技術者、協力会社、完成後の保証まで整理することで、会社売却・買収・事業承継の条件を具体的に検討できます。このページは、検討を始める経営者のための全体ガイドです。
作成・編集:建設工事M&A総合センター編集部/運営:株式会社M&A Do
公開日:2026年9月24日。制度の適用は案件ごとに異なります。許認可は管轄行政庁、契約・税務は各専門家と確認してください。
建設工事M&Aの方法と、許可の引継ぎ
「会社全体を引き継ぐのか」「特定の事業・拠点を引き継ぐのか」で、必要な合意や手続きが変わります。価格を決める前に、施工中の現場、許可業種、技術者、借入・保証をどの主体に残すかを整理しましょう。
| 比較する項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 基本的な対象 | 株主が保有する株式。事業を営む法人自体は存続します。 | 契約で定めた事業・資産・権利など。対象と対象外を明確にします。 |
| 許可・資格者 | 法人が存続しても、役員変更や技術者退職に伴う届出・許可要件の確認が必要です。 | 建設業許可を当然に移せるとは限りません。承継制度の対象・要件と事前認可を管轄行政庁に確認します。 |
| 工事契約・従業員 | 法人に残る契約について、株主変更時の承諾条項や取引継続条件を確認します。 | 契約や雇用の承継に必要な相手方の同意・手続きを個別に確認します。 |
| 過去の責任 | 対象法人の簿外債務、未払残業、保証・紛争等も調査します。 | 承継する債務・保証と残る責任を契約で整理し、適用法令も確認します。 |
建設業の事業譲渡・合併・分割には、条件を満たして事前認可を受ける承継制度があります。一部事業だけを切り出す案件では制度を使えるかを特に確認し、工事の空白期間が生じない日程を組みます。許可の承継と、公共工事の入札参加資格・発注者との契約は分けて確認する必要があります。
制度の確認先:関東地方整備局「建設業の許可について」。実務の詳しい整理は 建設業許可・経審・工事台帳の確認 をご覧ください。
売却価格は、受注残の額だけでは決まりません
一律の倍率だけで会社の価値や手取り額を決めることはできません。継続して利益を生む力、資産と負債、工事を完成させるための支出、経営者が抜けた後の体制を合わせて検討します。
- 工事別の収益性:売上・請負額に対して、実行予算、発注済原価、追加原価、完成までの見込みを照合します。赤字工事を受注残の総額に埋もれさせないことが大切です。
- 資金繰り:未成工事支出金・未成工事受入金、出来高請求、回収サイト、外注費の支払時期を一覧にします。利益があっても運転資金が不足する構造を見落とさないようにします。
- 人と取引の継続性:経営者個人に依存する受注、技術者の退職予定、主要な協力会社への集中を確認します。
- 資産・負債と保証:重機・車両の所有とリース、置場・不動産、借入金、個人保証、補修・訴訟対応を整理します。
交渉では、企業価値・株式価値・経営者の受取額を混同しないよう、借入返済、役員退職金、税金、専門家費用等の扱いを確認します。具体的な価格判断は 建設会社の企業価値評価 で確認できます。
8つの工種から、確認すべき実務を探す
複数の工種を営む会社は、許可業種と実際の工事内容を照らし合わせてご覧ください。
- 総合建設業・工務店のM&A
元請比率、工事別採算、受注残、施工管理者の配置を整理します。
- 土木工事のM&A
経審、入札参加資格、公共工事の実績、重機と技術者を整理します。
- 電気工事のM&A
電気工事士、施工管理技士、登録・届出、保守契約を整理します。
- 管工事・空調設備のM&A
給排水の指定、保守点検契約、資格者、設備の保証を整理します。
- 塗装・防水工事のM&A
職人の継続、雨漏り・防水保証、改修実績、追加工事を整理します。
- 解体工事のM&A
石綿調査・除去の体制、産廃処理、重機、安全記録を整理します。
- 内装・リフォームのM&A
設計・営業の引継ぎ、リピート顧客、原価、保証対応を整理します。
- 足場・型枠工事のM&A
職長・技能者、資材の数量と所有、置場、安全・労務を整理します。
工種別・地域別の専門記事
会社の主な工種や受注地域に合わせて、承継前に確認する資料と現場の課題を詳しく確認できます。
- 福岡の建設会社M&A:地域別の受注構造と公共工事・人材の承継
- 造園工事会社M&A:公共緑化・維持管理契約・枯損保証の確認
- 防水工事会社M&A:検討から成約・引継ぎまでの進め方
- 左官工事会社M&A:職人技能・湿式仕上げ・若手への技能承継
- 舗装工事会社M&A:重機稼働・公共工事・地域維持工事の評価資料
- 屋根工事会社M&A:雨漏り対応・板金職人・元請取引の確認
- 鉄骨工事会社M&A:工場加工・建方班・溶接資格の承継
初回相談から段階的に揃える資料
最初から全資料が完成している必要はありません。初回は概要を伝え、秘密保持と開示先・開示範囲を確認してから詳細資料を準備します。資料の版・作成日・担当者を揃えると、確認の行き違いを減らせます。
- 会社と株主:会社概要、登記、株主構成、譲渡対象、希望時期、残したい条件。
- 財務:直近数期の決算・申告、月次試算表、借入・保証・リースの一覧。
- 工事:工事台帳、受注残、実行予算、工事別原価、未回収債権、追加工事の合意状況。
- 許可・人員:建設業許可通知・更新資料、経審関係資料、資格者と配置状況、雇用・外注の区分。
- 契約・責任:主要な請負契約、取引基本契約、保証・補修、安全・労務、紛争に関する記録。
確認資料と調査の観点は 建設M&Aのデューデリジェンス・チェックリスト、早い段階の改善課題は 建設会社の売却準備 にまとめています。従業員名簿や顧客の個人情報は、開示の必要性と適法な取扱いを確認して、範囲を絞って共有します。
相談から契約・引継ぎまでの流れ
- 目的を整理する:後継者不在、成長投資、経営者の引退などの背景と、雇用・社名・拠点についての希望を確認します。
- 秘密保持と現状確認:開示範囲、連絡窓口、資料管理の方法を決め、会社の強みと課題を整理します。
- 候補先との検討:社名開示の段階を相談し、価格だけでなく現場・従業員・取引先への対応方針を確認します。
- 基本合意・調査:独占交渉、調査範囲、費用、解除条件を確認し、財務・法務・許認可等を精査します。
- 最終契約・実行:前提条件、承諾・認可、保証解除、代金決済、引継ぎ事項を揃えます。
- 実行後の引継ぎ:現場ごとの責任者、入出金、発注権限、資格者配置、補修窓口を確認します。
期間は候補先の状況、調査、金融機関や行政庁の手続きで変わります。希望する退任日から逆算し、施工中の工事や繁忙期に無理がない日程を検討しましょう。
費用と、支援契約で確認すること
当センターへ譲渡企業様がお支払いいただくM&A支援手数料は、相談料・着手金・中間金・成功報酬を含め0円です。弁護士・税理士など外部専門家への個別依頼費用とは区別されます。必要性と金額は事前にご案内します。詳しくは手数料の対象と説明をご覧ください。譲受企業様は支援内容と報酬条件を個別に確認してください。
契約前には、仲介・FAなどの役割、利益相反の管理、報酬の計算対象と支払時期、専任・直接交渉制限、契約終了後の報酬条件、秘密保持を確認します。当センターの中小M&Aガイドラインに関する方針と利益相反管理方針も公開しています。
建設工事M&Aのよくある質問
後継者が決まっていない段階でも相談できますか?
はい。譲渡を決める前でも、親族・従業員への承継を含めて選択肢を整理できます。まず、希望時期、経営者の役割、従業員や現場で維持したい条件を共有してください。
許可があれば、そのまま買収先で工事をできますか?
許可を持つ主体、取引方法、業種、技術者の配置等によって異なります。許可証の有無だけで判断せず、取引後の要件と必要手続きを管轄行政庁・専門家へ確認します。
赤字の工事や借入があっても検討できますか?
個別に確認できますが、成約や価格を保証するものではありません。赤字の発生要因、完成までの追加費用、借入と個人保証、改善の見通しを整理して検討します。
会社名を伏せて検討を始められますか?
初期段階の匿名資料や段階的な開示を相談できます。ただし、地域・売上・工種の組み合わせでも会社が推測される場合があります。匿名打診と情報開示の順序 を確認し、開示先と範囲を決めて進めます。
個人保証は成約すれば自動で外れますか?
自動で解除されるとは限りません。金融機関等の合意と手続き、解除の実行時期、確認書類を整理し、最終契約の条件と整合させる必要があります。
